〔035〕巻機山 (1,967m)
2005年08月17日(当時56歳)
桜坂駐車場 | 避難路分岐 | アイガメの滝 | 二俣出会い | 井戸尾根 | 御機屋 | 巻機山 |
5:55 | 6:18 | 7:09 | 8:30 | 13:28 | 13:36 | 13:51 |
御機屋 | 避難小屋 | ニセ巻機 | ビューポイント | 五合目 | 四合目 | 三合目 | 桜坂駐車場 |
14:10 | 14:28 | 14:40 | 15:21 | 16:44 | 17:08 | 17:30 | 17:44 |
塩沢町観光協会のHPより
巻機山は日本百名山の一つです。 新潟、群馬の二県にまたがり、頂上付近の豊富な高山植物と神秘的な池塘(ちとう)群、緑の原生林に覆われた山麓、頂上からの展望の素晴らしさで知られています。
美しい風景に恵まれている割引沢には、名のごとく空に向かって吹き上げている「吹上の滝」や、真青な水を深くたたえて流れ落ちる「アイガメの滝」など数々の名瀑や奇岩があり、春にはシャクナゲ・ニッコウキスゲ・ハクサンコザクラなどの珍しい花々が咲き誇ります。
複雑に入り組んだ沢筋はかなり遅い時期
まで雪が残り、夏の暑さを忘れさせる涼しい雪渓歩きが楽しめます。 登山口からの標高差は1,500mに及ぶため、ふもとの人情味あふれる清水の民宿に投宿し、早朝に出発することをお勧めします。
ただし沢コースはルートを見失いやすいため十分注意が必要。 また、当山には特に珍しいアマツバメの営巣の洞窟があり、保護区に指定されています。
登山ルート
今週に入って新潟地方は集中豪雨が続いていた。巻機山へはヌクビ沢から絶対に登りたいと思っていたので沢は増水しているかも知れないが兎に角、ヌクビ沢に入ってみる。尾根筋に出た後は割引岳に登り、引き返して巻機山を経由して牛ヶ岳まで足を伸ばす予定(だった)。
行き成り大転倒 5時30分、出発する。 昨日、車で桜坂駐車場の場所を確認しながら違う林道にどんどん入ってしまい間違いに気付き引き返している時に舗装路の小石で滑って大きく扱けてしまった。 右膝を強打し、ズボンは擦り切れて穴が開いてしまった、幸先悪い。 これは駐車場代をケチった罰か。 この怪我が今後の5日間痛みが残ることになる。
桜坂有料駐車場には昨夜から10台程の車が停まっていた。
登山口〜井戸尾根コース分岐 5時55分出発。 登山口から林道を少し歩くと井戸尾根コースへの分岐となる。迷わず割引沢へのコースを取る。別荘地の様な畑の畦道を進むと雑木林に入って行き、次に割引沢が増水した場合の避難路コースの分岐点となるが、ここでも迷わず割引沢へと進む。
早朝の ”天狗岩”5時32分、桜坂駐車場手前から見た
天狗岩と割引沢の雪渓。 ここからはヌクビ沢は見えない。
増水した沢水。 割引沢両側の尾根からは昨日の雨水が流れ込み、沢は大きな
音を立てて流れていた。 小さな滝が多く、飽きることのない景観が続く。
50分歩いた地点にて、前方に天狗岩の先端部が見えてきた。
1時間13分にて落差65mの2段瀑である ”アイガメの滝”に出る。 多分、雨天後のにわか滝だと思うが、アイガメの滝の反対斜面からも二筋の糸滝が流れていた。 登山道はアイガメの滝の左端を這いつくばってよじ登る。 左の写真は下から見たアイガメの滝、右の写真は滝上から写すが高度感が今一出ていない。
渡渉が出来ない。 7時23分、ここまで何度も渡渉があったが、左の箇所はどうしても渡れない。渡れそうな場所を探して靴を半分水に漬けて渡りきる。 中央の箇所も写真では大したことがない沢に見えるが渡渉出来る場所を探すのに苦労した。
”布千岩”を下から見る。 斜度のきつい一枚岩の岩盤であるが、
グリップが良く鎖に頼らなくても登れた。
”布千岩”の上から見る。 登り切って上から覗き込むと高度感があり、
下りなら鎖を頼らないと降りられないだろう。
行き成り人が出て来て驚く。 下を向いて沢を歩いていて、ふと顔を上げると木の陰におっさんが立っていてびっくりした。 避難路を歩いてヌクビ沢に出てしまい、割引沢はどっちだと聞いてくるので、少し下れば二俣の分岐があると教えてやったが、連れのおばはんがあの斜面を降りられるか、後から心配になった。 避難路との分岐に着く。 8時05分、俺を驚かしたおっさんの出てきた分岐点に着く。 避難路とはやらしい名前であるが、どうせ雑木林の展望の利かない道だろうから歩きたいとは思わない。 でも増水時には避難路を歩く必要が出て来るのか?。
トラバース路の通過は足を踏み外せば死ぬと思った。
9時23分、崖っぷちに設けられたトラバース路を通過するが、踏み跡は巾20cm程しかなく、沢側は垂直の崖では立ち木は一切無いので
踏み跡が崩れる、踏み外すをすれば、沢まで一機に転落だろう。
掴むものは草しかないが、その草も先行者が半分ちぎっていた。
ヌクビ沢の上流部は残雪が多く、雪渓となっていた。 硬くしっかりしているが、下に沢が流れており、ミニクレバス状の割れ目もあるのでので注意して歩く。 雪渓から降りてくる空気が冷たく気持ち良い。
失意の薮扱き3時間
一つ目の残雪帯が終わりしばらく沢道を歩くと二つ目の残雪帯が現われた。どこから取り付こうかと周りを見ると右手の壁に踏み跡の様に見える箇所が見えた。 あれをトラバースするのかと錯覚しその壁に入り込み進んで行くと、地盤が緩く進めなくなってしまった。 触る石は全て落石していく、掴むと抜けてしまう草しか生えていない。 地盤自体が今にも崩落しそうに浮き上がっている。 ここまで登れたが眼下は直下の崖、足元が崩れて行くので降りられない。 登るのにも掴むものが無く登れない状態であるが、周りには誰も居らず自力に何とかするしかない。 足でステップを作り、手で地面を掴む様にして上へ登る。 無事、上がれたのは良いがどこを見ても垂直近い崖である。
尾根を藪扱きして東側の登山道に出ることを決める。
尾根に登山道が通っているのは判っている。 井戸尾根まで登るしかない。 周りは背丈以上の笹原、斜度がきつく掻き分けて進むと言うより、笹を両手に掴んで懸垂の様に体を持ち上げていくしかない。
足元は自分が踏んだ笹で氷に乗っている様に滑る。 同じ場所で何度も滑って腹ばい状態になってしまうのには失笑してしまう。 笹に突かれ、しばかれ、メガネを飛ばされ下から見えていた稜線に辿り着くと更に上に稜線が見える。
身動き取れないところにアブがグラマン戦闘機の様に襲い掛かってくる。 笹に付いた露と汗で全身びっしょり。 稜線に何度も失意し、4度目の稜線で登山道と出会えた。
3時間10分の薮扱きで両腕は傷まみれ、腕は上がってしまっている。
出たのは避難小屋の上辺り、池塘群のある所だった。
13時29分、ボロボロの体で山頂へ向う。
7時間42分にてインチキ山頂の ”御機屋”に着く。
ここには山頂標識がしっかり立っているが、ネットで、
ここが山頂では無いことを知っているので騙されなかった。
”御機屋”から穏やかな道を少し歩くと本物の ”巻機山”(1,967m)に着く。 こちらには山頂の標識が無い。 後ろに見えるピークは ”牛ヶ岳”だろうか? 時既に13時51分、予定の割引岳、牛ヶ岳へは行かずに
下山する。
”避難小屋”の内部は、きれいに掃除されていた。
”避難小屋”付近から見た左、縦走路、右上の小さいピークが巻機山山頂、随分とたおやかな山である。
”井戸尾根”からは4箇所 ”天狗岩”を望める箇所があるが、今日はガスが掛かり展望は
よろしく無かった。 ”ヌクビ沢”の全容が見て取れた。 数時間前にはあそこを歩いていたんだ。
4つ目の尾根を超えて登山道が見えた時は ”これで助かった!”と涙が出る程嬉しかった。
下には池塘が見えたので現在地が特定出来た。